こんにちは。エンジニアリングマネージャーの さとうだいすけ です。
アスクルではプロジェクトのはじめにインセプションデッキを作成し、プロジェクトのおわりにプロジェクトレトロスペクティブを行っています。 本記事では、プロジェクトレトロスペクティブにて、ワールドカフェを実施したお話を(できる限り)全部お見せしようと思います。
ワールドカフェとは
ワールドカフェとは、カフェのようなリラックスした空間と雰囲気の中で、少人数に分かれたテーブルで対話を行います。ただ対話をするのではなく、他のテーブルとメンバーをシャッフルをして対話を繰り返すことで参加者全員の知識と意見を集約することができるという対話手法です。
ワールドカフェには以下のような効果があります。
- 少人数での対話により、話しやすく発言の機会が増える
- 参加意識や共感が高まり、能動的にアイデアを出すことができる
- 参加者全員の意見を集めることができる
続いて、ワールドカフェのプロセスを紹介します。ワールドカフェは4回のラウンドに分けてディスカッションを行います。
- ROUND1 「テーマについて探求する」
4人ほどの人数に分かれてテーブルを囲み、テーマについてディスカッションする。 - ROUND2 「アイデアを他花受粉*1する」
各テーブルに"ホスト"を1名残し、他のメンバーは"旅人"として別のテーブルに移動する。ホストと旅人は自分のテーブルで出たアイデアを共有し合う。 - ROUND3 「気づきや発見を統合する」
旅人は元のテーブルに戻り、旅で得たアイデアを共有し対話する。 - ROUND4 「集合的な発見を収穫し、共有する」
全体で対話をして、アイデアをまとめる。
旅人が別のテーブルに旅をして、元のテーブルに戻ってくることで、参加者全員の意見を集めるという仕掛けになっています。ワールドカフェは人数が多い場で意見を集約するのに適しているアクティビティです。
今回のレトロスペクティブは、参加者が15名ほどだったので実施してみることにしました。
ワールドカフェの仕掛け
- カフェで話しているように空間をアレンジする
カジュアルに対話をするために、小さなテーブルにお菓子やドリンクを用意します。 - トーキングオブジェクトを各テーブルに置こう
話す人はトーキングオブジェクトというオブジェクトを手に持って話すというルールがあります。一人が話しすぎるということを防止して、全員が話せるように配慮する工夫です。
プロジェクトレトロスペクティブ
レトロスペクティブは、 "場を設定する", "データを収集する", "アイデアを出す", "何をすべきか決定する" という流れがスタンダードになります。今回は以下のようなアジェンダで実施しました。
所要時間 | 内容 | |
---|---|---|
はじまり | 10min |
|
場を設定する | 15min |
|
データを収集する | 40min |
|
ワールドカフェ (アイデアを出す, 何をすべきか決定する) |
85min |
|
おわり |
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ワールドカフェを実施するということで、社内のカフェスペースでコーヒーを飲みながらワイワイとディスカッションしました。
はじまり
レトロスペクティブの決まりごと
今回は2つの決まり事を設けました。
- You message は使わない。 I message を使おう。
- 飲食自由!気楽に、気軽に。
I Message とは、主語を「私は」で話すことをいいます。主語を「私に」にすることで、人のせいにしないで「私は◯◯をすることで、□□ができた」「私は〇〇があると嬉しかった」というような会話になります。
レトロスペクティブのテーマ
プロジェクトチームは解散を予定していたため、組織への貢献をテーマに設定しました。
『ロハコの開発メンバーが今後のプロジェクトをより良く進められるように、我々にできることは何か』
場を設定する
フォーカスオン/フォーカスオフ として、下記が何を意味するのかというのを、隣の人とディスカッションして各ペアで発表しました。レトロスペクティブを行う上で、重要な考え方の認識をセットするのと、発声練習も兼ねています。
- 質問 > 主張
- 対話 > 議論
- 会話 > 口論
- 受容 > 防御
- 本音を言う > 空気を読む
"本音を言う" というのが特徴的ですが、プロジェクトが終わった今だからこそ言えることもあるかと思ってセットしてみました。これに対して「居酒屋スタイルだね!?」というコメントをもらいました… ^^;
ハッ( ゚д゚) ワールド居酒屋になってしまうのか…!?
データを収集する
タイムラインとエモーションラインを作成しました。長いプロジェクトだったので、月ごとのトピックスを思い出す限り書き出します。
付箋に書き出ししてホワイトボードに貼り付けます。各付箋を眺めながら各イベントがどのような感情になったのかをドットシールを使ってドットエモーションを作成します。
ドットシールの色は、下記の感情とマッピングしました。
- 緑:喜
- 赤:怒
- 青:哀
- 黄:楽
続いて、感情を線上に表すエモーションラインを作成しました。どん底の時期もあればアップしている時期もありますね。
これでデータは収集できました。感情はチームのモチベーションへと反映されているので、気持ちが高ぶるイベントは再現性を高められるように、気持ちが沈むものは再発しないようになどのアクションを考えることができます。
ワールドカフェ
さて、ここからワールドカフェを始めます。3つのテーブルに分かれて ROUND1 「テーマについて探求する」 を開始します。
集めたデータを見ながらディスカッションをしたり、
付箋を使ったりして各テーブルでテーマを探求します。
ROUND2 「アイデアを他花受粉する」 で旅人は別のテーブルに移動*2しました。ホストが旅人にアイデアを共有しています。(手に持っているものがトーキングオブジェクトです)
そして、 ROUND3 「気づきや発見を統合する」 で元のテーブルに戻ってアイデアをまとめていきます。
最後に、 ROUND4 「集合的な発見を収穫し、共有する」 でホワイトボードを使いながら各机のアイデアをまとめて具体的なアクションにします。
結果、各チームからは以下のようなアイデアが出てきました!
- チームをまたいだプロダクト共有会を定期的に実施する
- プロジェクトで学んだことを社内LT大会を開いて共有する
- などなど...
おわり
以上でレトロスペクティブは終了となります。
ひとつ、反省としてアイデアをフリーフォーマットにしていたため、"いつ", "だれが", "だれに", "何をする", などの情報が抜けていることもありました。そのため、全体ディスカッションで補完するのに時間を要してしまいました。
事前にアイデアのフォーマットを決めてしまえば、各テーブルで具体的なアクションまで落とし込めて、全体ディスカッションも最小限で済んだかと思います。
感謝でクローズ
レトロスペクティブの最後はプロジェクトメンバー全員が感謝を伝え合おうということで、感謝のコメントを全員紙に書いて伝えるということをやりました。が、人数が多かったので全員分書くのが大変でした。。
みんな「書くの大変だよ!」「口で伝えるから書かないよ!」と言いながらも、なんだかんだ全員分のありがとうコメントを書いていました。感動。
そして、手紙を渡してプロジェクトチームは解散しました。お疲れ様、ありがとう。
さいごにまとめ
プロジェクトレトロスペクティブは人数が多くなりがちで、ふりかえりとしての成果を出すのが難しいと感じていました。
ワールドカフェを用いれば、各グループで具体的なアクションまで落とし込んでディスカッションが進むため、レトロスペクティブのコンテンツとしても有用だったのでぜひ試してみてください!