平均誤差率5%達成!「内製AI汎用予測システム」が支えるアスクルの物流DX

ご挨拶

こんにちは。アスクル先端テクノロジーの楊です。
私たち先端テクノロジーチームでは、機械学習などAI技術を活用し、社内業務の効率化やお客様の満足度向上に取り組んでいます。私は主に、物流の最適化を目指して、需要予測や在庫管理のアルゴリズム開発を担当しています。
今回は、私たちのチームが2019年から開発を続けている「AI汎用予測システム」について、ご紹介したいと思います。

開発の背景

アスクルは、法人・個人向けに日用品やオフィス用品、医療・介護用品などを取り扱うECサービスを展開しており、全国のお客様に「必要なものを、必要なときに」お届けすることを目指しています。このミッションを支えるには、商品のサプライヤーへの発注、倉庫日々の人員配置、在庫補充の外部倉庫の活用といった日々のオペレーションをいかに効率的に回すかが鍵になります。こうした業務の最適化には、高精度な「受注予測」や「出荷物量の予測」が欠かせません。予測の精度が上がれば、ムダなコストや作業の偏りを減らし、よりスムーズな物流が実現できるのです。

AIによる予測モデルは世の中にたくさんありますが、汎用的なモデルでは企業ごとの業務やデータのクセまでうまく汲み取るのが難しく、「高精度な予測」はなかなか簡単には実現できないのが実情です。そこで、私たちは汎用性を持ちながらも、業務特有の要件を取り入れ、高精度な予測を実現するAI予測モデルを開発しました。システム開発の初期段階から、モデル選定やインタフェース(IF)の設計を工夫し、さまざまな業務に柔軟に適用できる仕組みを構築しました。また、最新技術を容易に取り込むことができる設計にも配慮しています。

全体構成図

AI汎用予測システムの全体の流れは、下図に示すとおりです。システムは主に「モデルの学習と予測」と「予測精度の監視および可視化機能」の2つのパートに分かれており、これらが連携することで、予測精度を継続的に改善する仕組みを提供しています。 forecast_system_flow.png

  • 「モデル学習と予測機能」 予測モデルの学習は、実績データや特徴量に基づいたデータ分析から始まります。最適な予測モデル群を選定した後、アンサンブル手法やクロスラーニングといった高度な技術を組み合わせ、最終的な予測モデルを構築します。 事前のデータ分析により、どのようなデータに対しても、分析結果に基づいて適切な予測手法を選定することが可能になります。汎用的なモデルインタフェース設計により、最新のモデルも容易に追加でき、アンサンブルの仕組みに活用できます。

  • 「予測精度監視と可視化機能」 予測モデルが実データに対してどの程度の精度を維持しているかを継続的に監視することは、実用的なAIシステムにおいて不可欠です。本システムでは、定期的に予測精度をチェックし、精度の低下が検出された場合には、モデルの改善や再学習を適宜実行する仕組みを備えています。加えて、予測結果は可視化ダッシュボードにより、直感的に確認できるよう設計されており、ユーザが迅速に意思決定できる環境を提供します。

応用場面

AI汎用予測システムは、現在複数の業務領域で運用されており、さまざまな意思決定の高度化を支援しています。これらの活用を通じて、業務の効率化やコスト削減、サービスレベルの向上に貢献しています。

  • 発注計画
    オフィス用品や医療・物流資材などを取り扱うアスクルでは、自社の在庫管理および物流効率の最大化を目的として、商品ごとの仕入れ・補充に関する発注計画を日々策定しています。この発注計画の基盤となるのが、各商品の受注予測です。高精度な予測データを活用することで、販促情報などによって頻繁に変動する需要を的確に捉え、最適なタイミングと数量での発注を実現しています。
    内製AI汎用予測システムの導入により、既存モデルと比較して予測精度が44%向上し、在庫の最適化および欠品リスクの低減に大きく貢献しています(評価期間:2024年8月から2024年9月(5000超SKU)

  • 外部倉庫の横持ち計画
    アスクルでは品揃えの拡大に取り組む中で、物流戦略として物流センター近隣の外部倉庫に余剰在庫を一時的に保管する仕組みを強化しています。これにより、物流センターの出荷能力や受け入れ間口を最大限に活用しています。
    物流センターと外部倉庫間の横持ち計画は、日々の出荷予測をベースに立案されており、在庫の適正配置とスムーズな物流オペレーションを実現しています。AI汎用予測システムの導入により、既存モデルと比較して予測精度が43%向上しました。この取り組みに関するプレスリリースは、69件のメディア掲載・転載実績を達成しました(外部倉庫評価期間:2024年3月から2024年5月まで(500弱SKU)
    https://www.askul.co.jp/kaisya/dx/stories/00147.html?nextUri=/kaisya/dx/stories/00147.html&sc_e_complete=1

    外部倉庫予測活用イメージ

  • 物流センター人員配置
    アスクルの各物流センターでは、日々変動する業務量に柔軟かつ効率的に対応するため、必要な作業員数やスキル構成を適切に配置することが非常に重要です。そのため、毎日の出荷量を高精度に予測し、作業計画やシフト編成の基盤としています。これまで手動で作成されていた出荷量予測は、AI汎用予測システムの導入により自動生成が可能となりました。その結果、各物流センターでは平均誤差率を運用に適した5%まで抑えることができており、より安定した効率的な人員配置が実現しています。(物量予測評価期間:2024年4月から10月まで(全センター))

今後の動き

現在、AI汎用予測システムは一定の安定性を持ち、高精度な予測を実現しています。今後も新技術を積極的に取り入れながら、多様な業務に幅広く活用できるよう、継続的な改善を進めてまいります。 AI汎用予測システム特徴

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